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創作・歴史系サイト「魔女ノ安息地」の更新状況や、 メッセージへの返信、その他日常の雑記の書き込み場所です。
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『百枚の定家』
梓澤要 1998 新人物往来社(文庫:2001 幻冬社)

平安~鎌倉時代の歌人、藤原定家選定と伝わる
小倉百人一首の定家直筆の色紙、
通称「小倉色紙」にまつわる現代ミステリーです。

時代は現代ですが、歴史と美術のミステリーとして秀逸です。
それもそのはず。作者の梓澤要さんは、奈良時代の
橘奈良麻呂の生涯を書いた『阿修羅』でデビューされ、
同時代の『橘三千代』(←超オススメ!)や『喜娘』、
徳川家康の次男、結城秀康の生涯を追う『越前宰相秀康』、
滝沢馬琴の息子の嫁を主役に据えた『恋戦恋勝』(文庫:ゆすらうめ)、
などなど数多くの歴史小説を書いておられる作家さんです。

特に素晴らしいのが、美術に対する人々の気持ちや歴史を、
奇麗事なしで、実に写実的に紹介していらっしゃることです。
何故、小倉色紙は珍重されているのか。
歴史的な価値は、そして美術界での扱いはどうなのか。
そもそも小倉百人一首や小倉色紙とは何物なのか、という
禁忌の聖域とも言える謎に挑戦されていて、
見事な謎解きを提示してくださっています。

歴史好きさんや美術史好き、古美術好きさんは勿論、
短歌を詠まれる方、競技百人一首をなさる方、
美術館や博物館に行くのが好きという方、
そして書道や茶の湯がお好きな方も是非読んでください。

主人公は美術館に勤務する学芸員、
舞台も勤務先の公立美術館です。
藤原定家が生きた平安から鎌倉時代の泥臭さ、
室町、戦国時代を生きたある男の人生を経て、
安土桃山時代から江戸時代初期の激動に絡めた、
人々の激しい息遣いが感じられます。
更に、定家の恋の妄執も絡めて、実に様々な人の怨念が
作品の中で入り混じり、現代を生きる主人公達の心も
それに重ね合わさるかのように複雑に駆け引きされるのです。

そして、現代を生きる登場人物の描かれ方がまた素晴らしい。
美術館の辣腕館長、今村が主人公を鼓舞する言葉には
彼の器の大きさを感じさせられます。
都会の理知的なキャリアウーマンでありながら、
その本性が掴めそうで掴めない玲子にも心惹かれます。
商売人としておそろしいほどの抜け目無さや
余裕っぷりを見せる画廊のオーナー海野や
研究者として相反する道を極めている大河内と佐方も
何とも灰汁の強い魅力に満ちています。
古美術商の永井の語りはまるで歴史の御伽草紙のようで、
ついつい惹き込まれてしまいます。
また、主人公の姉、英子の歩んできた人生の激しさ。
平凡に生きているように見える現代の人々もまた、
激しく生き抜く歴史上の人物達のようです。
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プロフィール
HN:
夕陽
性別:
女性
職業:
人間!
趣味:
小説を書くこと(妄想?)
自己紹介:
ぐーたら生活X年目。歴史好きの小説好き。でも、難しいのは駄目です。
好きな方々(敬称略・順不同):
(作家)柏葉幸子、久能千明、永井路子、柴田よしき、桜庭一樹
(歌手)TWO-MIX、倉木麻衣、中島みゆき、天野月子、The Gospellers
(画家)KAGAYA、ラッセン、ミュシャ
(声優)中原茂、高山みなみ、子安武人
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