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創作・歴史系サイト「魔女ノ安息地」の更新状況や、 メッセージへの返信、その他日常の雑記の書き込み場所です。
 
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我慢に我慢を重ねて逃げたくなると
欲しいと思っていたものを手に入れたくなる。
というわけで、Amazonで古本購入です。
(いや、買う口実を見つけたというだけですね 笑)

『橘三千代』
梓澤要 2001 新人物往来社

橘三千代さんと言えば、藤原不比等の正妻で
光明皇后のお母様でもあります。
天武~聖武の六代の天皇に仕えた後宮女官であり、
文武・聖武によっては乳母でもあります。
そして何よりも、この人は橘氏の祖なのです。
源平藤橘という日本の貴族の名門中の名門の一つ、
橘氏はたった一人の女性から始まったのですねえ。

何せ彼女も遺された資料が少ない人ですから、
梓澤先生の素晴らしい考察力と想像力で
見事な三千代像が描かれています。
感動的だったのは、望まぬ妊娠をさせられた三千代が、
子供を産み落とした後に二上山に駆け上がるシーンです。
「大丈夫。わたしはまだ頑張れる」
朝日に次第に照らされながら、泣きながらも
そう自分に言い聞かせる彼女の姿に貰い泣きしました。

それから、梓澤先生の書かれる草壁皇子も新鮮でした。
優しいけど、決して意志の弱くない草壁様が
どうして帝位に就きたくないのかを
三千代に向かって吐露する場面は本当に痛々しいです。

あと、房前がキレ者です。
「好餌はこちらから投げ与えねば、意味が無い。」
なんて、彼でなければ言えない台詞だと思います。
出し惜しみするのではなく、相手が欲しいと思っている時に
協力を申し出る。そして、恩を売って取り込む。
策士ってこういう人のことを言うのでしょうね。

吉備ちゃまが高飛車な性格なのが残念でした。
でも、不比等や阿閇皇女などの描かれ方も素晴らしく、
分厚い単行本の上下巻をあっと言う間に読み終わりました。
これからも宝物になりそうです。
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『百枚の定家』
梓澤要 1998 新人物往来社(文庫:2001 幻冬社)

平安~鎌倉時代の歌人、藤原定家選定と伝わる
小倉百人一首の定家直筆の色紙、
通称「小倉色紙」にまつわる現代ミステリーです。

時代は現代ですが、歴史と美術のミステリーとして秀逸です。
それもそのはず。作者の梓澤要さんは、奈良時代の
橘奈良麻呂の生涯を書いた『阿修羅』でデビューされ、
同時代の『橘三千代』(←超オススメ!)や『喜娘』、
徳川家康の次男、結城秀康の生涯を追う『越前宰相秀康』、
滝沢馬琴の息子の嫁を主役に据えた『恋戦恋勝』(文庫:ゆすらうめ)、
などなど数多くの歴史小説を書いておられる作家さんです。

特に素晴らしいのが、美術に対する人々の気持ちや歴史を、
奇麗事なしで、実に写実的に紹介していらっしゃることです。
何故、小倉色紙は珍重されているのか。
歴史的な価値は、そして美術界での扱いはどうなのか。
そもそも小倉百人一首や小倉色紙とは何物なのか、という
禁忌の聖域とも言える謎に挑戦されていて、
見事な謎解きを提示してくださっています。

歴史好きさんや美術史好き、古美術好きさんは勿論、
短歌を詠まれる方、競技百人一首をなさる方、
美術館や博物館に行くのが好きという方、
そして書道や茶の湯がお好きな方も是非読んでください。

主人公は美術館に勤務する学芸員、
舞台も勤務先の公立美術館です。
藤原定家が生きた平安から鎌倉時代の泥臭さ、
室町、戦国時代を生きたある男の人生を経て、
安土桃山時代から江戸時代初期の激動に絡めた、
人々の激しい息遣いが感じられます。
更に、定家の恋の妄執も絡めて、実に様々な人の怨念が
作品の中で入り混じり、現代を生きる主人公達の心も
それに重ね合わさるかのように複雑に駆け引きされるのです。

そして、現代を生きる登場人物の描かれ方がまた素晴らしい。
美術館の辣腕館長、今村が主人公を鼓舞する言葉には
彼の器の大きさを感じさせられます。
都会の理知的なキャリアウーマンでありながら、
その本性が掴めそうで掴めない玲子にも心惹かれます。
商売人としておそろしいほどの抜け目無さや
余裕っぷりを見せる画廊のオーナー海野や
研究者として相反する道を極めている大河内と佐方も
何とも灰汁の強い魅力に満ちています。
古美術商の永井の語りはまるで歴史の御伽草紙のようで、
ついつい惹き込まれてしまいます。
また、主人公の姉、英子の歩んできた人生の激しさ。
平凡に生きているように見える現代の人々もまた、
激しく生き抜く歴史上の人物達のようです。
幕末銃姫伝―京の風 会津の花
藤本ひとみ 2010 中央公論新社

再来年の大河ドラマの主人公である
山本八重、後の新島八重を書いた物語でした。

でした、と書いたのは、そうと知らずに読み始めたからです。
図書館でつらつらと物色していたら、
好きな作家さんである藤本ひとみさんが
珍しく幕末ものを書いているのに驚いて、
借りてみまして、4分の1くらい読んでから、
「あれ、これはもしや新島譲の奥さんのことか??」と
やっとこさ気が付きました。

女らしく生きることに違和感を覚えた武家の娘、八重。
美人ではないけど力持ちで、男勝りな性格で、
兄の導きのもと、西洋式銃の腕前を磨き、
懸命に会津藩を守ろうとした半生が書かれていました。
明治の世に入る前の、封建的な世界の中で
社会の型にはまらない女性が、軋轢に苦しみながらも
懸命に自分を生かし、皆を守ろうとした姿に感動しました。

大河ドラマではどんな風に描かれるようでしょうか?
ちょっと楽しみです。
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プロフィール
HN:
夕陽
性別:
女性
職業:
人間!
趣味:
小説を書くこと(妄想?)
自己紹介:
ぐーたら生活X年目。歴史好きの小説好き。でも、難しいのは駄目です。
好きな方々(敬称略・順不同):
(作家)柏葉幸子、久能千明、永井路子、柴田よしき、桜庭一樹
(歌手)TWO-MIX、倉木麻衣、中島みゆき、天野月子、The Gospellers
(画家)KAGAYA、ラッセン、ミュシャ
(声優)中原茂、高山みなみ、子安武人
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